君に会えた夏

「ボクが死んだ日はハレ」を見に行ってから早数週間・・・。今更ですが、ちゃんと記録しておこうとやっとPCに(苦笑)

 

■「ボクが死んだ日はハレ」

2017年7月15日 19:00 / 17日 13:00(千秋楽)@シアター風姿花伝

 

はじめましてのシアター風姿花伝。駅からちょっと遠くて行きにくくて、劇場も、「え、これマンション??」みたいな場所で(実際にマンションの中の1フロアなのだけど)ビックリしたのだけど、中に入ってそのこじんまりさにさらにビックリ。ステージ、近すぎる。ただでさえ7列目くらいまでしかないしどこでも近いと思うけど、最前列なんてつま先がステージではレベル。その中にさらに当日券や追加席等ぎゅうぎゅうに詰めていた。通路に座布団引いて座らせていたのはさすがにびっくり(笑)でも、色々考えてギリギリまで入れてくださったことに感謝。

 

自分的初日は2列目で、こんな場所で見たら死ぬんじゃないの・・・って思いながら席について、ステージ上と見渡すと、センターに円を描くように6脚の椅子が置かれ、上手側には勉強机とか冷蔵庫、おもちゃとか絵とか子どものものがやたら置いてあった。下手側にはキーボード。音楽を担当した森大輔さんが生演奏するんだったと思い起こす。10分前と5分前には上野哲也さんが影アナで注意事項をアナウンスされていた。開演時間の2分前くらいにすーっと森大輔さんが現れたのでちょっとびっくりした。キーボードにスタンバイし、森さんが演奏し始めて開演。

 

暗闇の中、下手奥の出入口から最初にすーっと出てくる人影を見た瞬間に、あっ・・・と思った。大き目のグレーのパーカーを着て、客席に背を向ける形で椅子に座るその後頭部。見覚えのある後頭部。キャスト6人が順に椅子に座り、ハミングを始める。そして、振り向いて、立ち上がり、ステージの前方に横に並び、優しく歌い上げる。ちょうど自分の目の前にグレーのパーカーの彼が立った。あぁ、ひろきだ・・・わたしの知ってる、ひろきがいた。優しい表情で、優しい歌声で。上野さんが導入部分のストーリーテラーのような形でお話して、さがっていくひろき。の後、息をしていなかったことに気づいて、深呼吸をするわたし(笑)死ぬかと思った(笑)

 

芸能界で、かつて一世を風靡した女たち。
20代で昭和の歌謡界をリードしたボーカリストは今や50代。
10代でグラビアを賑わせた踊るセクシータレントも今や40代。
7歳でデビュー、視聴率の申し子たる人気子役は、今や30代。
落ち目どころか落ちきった三人は、ひょんなことから、
掟破りの三世代ボーカルグループを結成することになる。

女たちの挫折は、喪った過去の愛情とあまりにも密接。
孤独も渇きも、三人揃えばドタバタ喜劇。
​もうここにはいない誰かの力を借りて、
かつての愛をサポーターに、
彼女たちは現在と未来の愛を獲得できるのか?

 

50代の元ボーカリスト・ミミ(浦嶋りんこさん)、40代の元セクシータレント・SHOKO(小野妃香里さん)、30代の元子役・かおり(笠松はるさん)の3人が組んだユニット「ハレバレハレルヤ」。3人は再び脚光を浴びるために、プロデューサー・すみ絵(高橋紀恵さん)とSHOKOのマネージャー・篠原(上野哲也さん)とともに、レコーディングを行っていた。しかし、レコーディング中に眠るようにミミが倒れてしまう・・・。

 

ひろきは、ミミ(本名:佐藤初美)の息子・佐藤ひかる役。眠ってしまったミミからの場面転換で現れたひかる。上手の机とか諸々のものは、ひかるとミミの部屋だった。ひかるは映画監督になるのが夢で、映画の専門学校に通っている二十歳。「今更だけど合格のお祝いしよう!美味しいもの食べよう」というミミに、「母さんの料理まずいから、外で食べようよ!」と悪態つきながらも仲の良い親子の様子が窺える。このとき冷蔵庫からパックのマミーを取り出して直で飲むひかる。二十歳でマミー!?と思ったけど、かわいいからなんでもいい。「母さんのハンバーグが食べたいな」というひかるに、「じゃあ買い物に行こう!」と去っていくミミ。そのあとを追いかけようとして、途中で足を止め、右手で自分の頭をむしるようにかくひかる。その姿に何か冷たいものを感じた。あれ、もしかして・・・。そして上手の奥の階段になっているところを駆け上がっていき、上の方で段に肘をついて伏せるように動かなくなるひかる。

 

そして場面は再びレコーディング現場へ。検査の結果なんともなかったというミミ、そしてお姑さん問題を抱えているかおりに、「パーッと飲みに行こうよ!」と誘うSHOKO。すると、「家で息子が待ってるから」と断るミミ。その発言が引っ掛かり、ミミが去ってから、すみ絵にミミの息子について尋ねるSHOKO。すると、「この間一周忌を終えたところよ」というすみ絵。バイトで行っていた映画のロケ現場で落石事故に遭い、即死だった。マスコミにばれないようにと示談にし、ひた隠しにしていたミミ。たまたま流れで教えてもらったというすみ絵の話に、「でも当たり前のように、息子が家で待ってる、って言ったよ??」と腑に落ちないSHOKO。

 

フライヤーが公開されたときに、「ひろきだけ座っているのは、死んでいるからかな?」って解釈をしている人がいるのを見かけて、「ボク」ってそういうことかな?と思っていたので、多分そうなんだろうと思ってたけど、「死んでいるけど、そこにいる」状態を演じているひろきの演技に、ひいき目かもしれないけどゾクゾクっとした。

 

そこから、ミミとひかるの時間軸が行ったり来たりする。小1のころ、自分の父親について週刊誌に書かれて、父親は死んだと聞かされていたのに嘘をつかれていたことに怒って、学校に行きたくないって体操座りで顔を伏せて泣くひかる。「来ないで!触らないで!嘘つきが移るから!!」ってミミを拒否する子どものひかるを演じるひろき。そして、再婚するというミミに「俺を生んだ時と同じようになる予感しかないけど!でも好きにすれば!」と反抗するひかる。「おっかぁ、金くれ。映画見たい。高校なんかいかねーし。親の背中を見て育っちゃいけないの?」とひねくれていた中3のひかるに、「あなたは他人です。あなたとの接し方を考えさせてください」と距離を置くミミ。

 

ミミは、かつてあったひかるとの思い出を夢の中で何度も再現していた。つらかったことでも、今となっては「幸福の巡礼」なのだという。そんな幸せそうなミミに、かおりは「でも、生きているひとと、わたしたちと一緒に生きてほしい!」と願う。ミミの身に起こっていることをなんとか理解しようと画策するSHOKOとかおり、すみ絵、篠原。「ひかるの乳歯を見つけて、高い水晶を買ったらひかるに会えた」というミミの話を聞いて、Amazonプライムで2千いくらかの水晶を買って3人に残念がられる篠原。その姿を見ているひかる。そこにいるけど、いない。水晶を覗く4人に、反対側から水晶に向かってピースするお茶目なひかる(笑)だけどそれが、存在していないことを強調させる。そして歌って踊る4人にまぎれて楽しそうに踊るひかる。すると、何かを見て突然腰を抜かすかおり。「ここにいます、ひかるくんが!!わたしたちに協力したいって・・・」

 

第二幕。ひかるとかおりの場面から始まる。ひかるはミミの中で何度も何度も生まれては生きて死んでいるのだという。説明しながら、階段を上ってジャンプしておりたり、側転したり、がっしりしてるのにふわっと柔らかい、あの軽やかな懐かしい動きを見せたりした。側転したときにちらっと見えた白い肌と腹筋。

 

かおりは子役のころ、役が憑依するように感受性が強く、自分が自分じゃなくなってしまうような気がして一旦芸能界を退いたのだという。「わかるよ、自分探しってやつ?」と同調するひかる。子どもの頃ってなんにでもなれたような気がした、と「水の中で宇宙飛行士になったかのように」みせたり、「本気でかめはめ波の修行をした」り、ふわふわと舞うように演じるひろきにきゅんとなった。

 

SHOKOたちがいる前で、ミミとひかるの最後の朝の場面が三度繰り返される。「お互い頑張ろうぜ!」がひかるの最後の言葉だった。この場面、まったく同じに三度演技をしなくてはいけなくて、何気に大変だなと思った。千秋楽の最後の「お互い頑張ろうぜ!」の声が掠れてしまっていた・・・。そして、SHOKOたちにかおりがひかるの声を代弁する。このとき、椅子に腰かけたひかるの背後にかおりが立ち、同じセリフを同じタイミングで「シンクロ」して発声する。これめちゃくちゃ難しいと思うんだけど、きれいにシンクロしていた。かなり息ぴったりにしないといけないのに、すごい。

 

ひかるは、母には生きてる人と生きてほしい、と願っていることをみんなに伝える。僕が夢の中で伝えるから、母が目を覚ますときにそばにいてあげてほしい、という。そして、SHOKOとすみ絵が去ったあと、篠原に向かって「SHOKOさんのこと好きだよね?付き合っちゃえば?」というひかる。もともとSHOKOのファンで支えたくてマネージャーになった篠原は、身分が違うから、という。「俺彼女がいたんだけど、奥手だから、アレ覚えたてで。大事にしてたら、あんまりできなかった。1日中、飽きるほどしたかったなー」というひかる。「女の子がいいのはわかってるけど、抱くぞ?」と言って姿の見えないひかるを抱きしめる篠原。ひかるの分もするから、という篠原。して、きっと気持ちいいよ、というひかる。

 

そして、あの世とこの世のデュエットだ!とかつてSHOKOが所属していたユニットの曲「Never Let Me Go」を二人で歌う。歌って踊るひかるくん。アバンチュールって歌詞のところで、背中に回した手を指折るその手つきがとてもひろきくん。大好きな姿。途中、当時の衣装を着てセンターに入ってくるSHOKOさんのご本人登場感が面白かった(笑)後半のソロダンス、美しく流れるような動きを繰り出すひろきくん。

 

そして、ミミが眠り、その時を待つSHOKOたち。しかし、かおりの元にひかるからヘルプが入る。大学受験に失敗して映画の専門学校を受けるというひかるに対し、反対してひかるが死なないようにミミが事実を捻じ曲げようとしていたのだ。「違うだろ。生まれては死んで、生まれては死んで、もういいだろ。人生にもしもはないんだ、あったことはなかったことにできないんだ。悲しいからって逃げるなよ」とミミに叫び、訴えかけるひかる。「ボクが死んだ日をハレの日にして。1人で僕を生んでくれた日みたいに、手をつないで入学式に行ってくれた日みたいに、専門学校に合格して喜んでくれた日みたいに、ボクが死んだ日もハレの日にして」と、ミミを抱きしめるひかる。そっと離し、「佐藤初美の子どもに生まれてよかった」と告げる。

 

 「ボクが死んだ日はハレ」

 

僕が生まれた日、BGMはゴジラのテーマ。だけど生まれたら天使だった。僕は天使じゃないけどね、母さんが笑ったから僕も笑い返しただけ。何度でも何度でも何度でも何度でも、僕を思い出していいから、生きて生きて生きて生きて。生まれてから、何度も繰り返す春夏秋冬。5月の晴れたあの日、おにぎりを食べて、いつか自分が撮る映画のために写真をとった。落石に遭い、その場に転がるひかる。ボクが死んだ日はハレ。晴れ晴れと晴れ渡る青い空の日、僕は消えたんだ。

 

そう歌い、離れようとするひかる。やだ、行かないで、と止めようとするミミに、「僕はちゃんと貰ったから、無条件の愛を。だから、大丈夫」「この人たち最高!ハレバレハレルヤ、楽しみにしてる」じゃあね、と階段をあがって去っていくひかる。

 

RPGのような戦いで(笑)SHOKOやかおりたちの手によって目を覚ますミミ。すっきりとしたミミ、歌いたいなぁ、という。そしてハレバレハレルヤのステージ。階段の上でにこにことリズムをとるひかるくん。下手の奥から紙吹雪を巻き散らす篠原好きだよ篠原。3人のパワフルな歌声と笑顔に包まれながら、幕は下りる。

 

もう一度「ハレバレハレルヤ」。みんな立って!というりんこさんに客席も立ち上がる。その間奏でソロダンス、ブレイクダンスを踊るひろき。あぁ、いつもの好きなひろきくんだー!!彼のバックヤードを知らない人が見たら、なんでこんなに踊れるんだろうとか思うのかなとか考えてた(真顔)

 

カーテンコールはキャスト6人と森さんとで並んでお辞儀していて、千秋楽は脚本・演出の石丸さんも登場した。石丸さんに向かって両手を突き出して、きゃーって手を振り振りするひろきくん、よく見たやつ(笑)鳴りやまない拍手に再度出てきてお辞儀して、はけるかと思ったら、お客さんからの「アンコール!」の声に、石丸さんが「ハレバレハレルヤ、カーテンコールバージョンで!」と森さんにリクエストして、「ハレバレハレルヤ」を歌ってくれた。この曲の始まりが階段の上なので、「階段の上に行った方がいいのかな?」ってジェスチャーしたひろきくんに、「ここでいいよ」って石丸さんが指すと、「ずっと踊ってたら?」ってマイクを通していうりんこさん(笑)エアキーボード弾いたり、フリーのところはいつものひろきくんだった。ひろきくんのソロダンスのところでは、バック転をしてくれた!思わず、ヒューッ!って言ってしまった(笑)晴れやかな顔で、最後の最後、幕の向こうに去っていくときに片手でバイバイってするひろきくん。すっごく、ひろきらしかった。

 

 

ボクハレという作品に出ることになった時、単に「事務所やめたけど、仕事が決まってよかった!」としか思ってなかったけど、百名ヒロキとしての「初めての作品」がボクハレで本当によかったなーって思いました。あたたかくて、優しくて、登場人物みんな愛しくて。わたしは大切な人を失ったことがないから、作品の根本的なところに感情移入はできてないかもしれないけど、ひかるくんの「佐藤初美の子どもに生まれてよかった」ってセリフには泣きました。ぼろぼろ泣いた。共演者の皆さんや石丸さんにとても丁寧に指導してもらったり、教えてもらったりして、初舞台を踏めたんだなぁってのも見て取れました。本当によかったなぁ。

 

実はこの作品で一番共感できたのは、SHOKOのマネージャーの篠原。SHOKOのことが大好きで、仕事を辞めようか悩んでいた時に偶然マネージャー募集の求人広告を見て応募し、採用されてSHOKOを支え続けている篠原。ヲタクとしてはある意味反則かもしれないけど、あくまでもSHOKOが幸せでいてくれれば!と願っている篠原がハレバレハレルヤの前座で歌った歌。

 

「あなたが生きて歌っていれば、笑って踊っていれば、それだけで幸せ」

 

わかる(わかる)

 

思わずフォント大。共感しかない。

 

3月頃に某雑誌で本人ではない人から、「『夢を追いたい』って辞めていった」って表現された時、彼の夢ってなんなのかなって考えた。芝居がやりたいのかな、って。歌ったり、踊ったりってことはしたくないのかなって。けど、ミュージカルがやりたい、ってネットのインタビュー記事で答えてたり、今回の作品で歌って踊ってる姿を見て、「アイドルじゃなくたって、十分大好きだー」って思えたんです。仲田だろうが、百名だろうが、ひろきはひろきで、あなたが生きて歌っていれば、笑って踊っていれば、それだけで幸せなんだ!!って。

 

じゃにーずを辞めたことがわかった直後に仲田時代のひろきの映像を何度も見て「幸福の巡礼」をしていたという人のブログをたまたま見たのだけど、わたしはそれはできなくて、辞めてから一切前のひろきくんの映像は見れてなくて、だからまるっと共感ではないけど、「過去は過去として思い出していいけど、仲田くんが消えた日もハレにして、そしてこれからの新しい未来を生きていく」ってことも「ボクハレ」と重なってるのかなって。

 

正直ね、これから先はどんな世界が待っているかわからない。仕事が続くかどうかわからないし、どれだけ自分が追えるかもわからない。ありがたくも、もうすでに3本も仕事が発表されてるし、中には国際フォーラムに立つなんていう大きな仕事もあるし、順調すぎてこわいけど。でもでも、「僕が観たかった、居たかった世界」「目的地は決まった」「どこへ向かっているのかで悩むことはもうない」っていうひろきくん、心強すぎるから。精一杯、ついていこうと思います。

 

ひろきくん、初めての舞台お疲れさまでした。これからのますますの活躍、楽しみにしています!